お せ ん ギ ツ ネ

 ある晩、男が寝ていると枕元に突然キツネが現われ、あっという問に寝ている子供の1人を連れ去ってしまいました。
 突然のできごとに驚き、そして困り果てた男は、近くの「わかさま」に考えてもらいました。
 そのわかさまがいうには、「おめえは大根久保へ行って、木の間に引っ掛がってだウサギを取って来て食べだっぺ。そのウサギは、おそらぐ大根久保に住むおせんギツネちゅう古ギツネの獲物だったんだよ。それをおめえが横取りしたんで、怒っておめえの子供を連れ去ったんだ」と言うのです。「ほんじや、どうすればいいんだっペね」とたずねると「赤飯1斗と、あぶらげ百枚をそごへ持ってげば大丈夫だ」と、言われたので、大急ぎで赤飯を炊き、あぶらげを添えて山へ持っていさました。
 しかし、その夜、それでも心配になった男は隙間という隙間を、ふさぎましたが、どこからかキツネが現われ、二人目の子供をむりやり連れ去ってしまいました。
 男は、再びわかさまに考えてもらいました。すると、「おめえはあぶらげを生のまま待ってったな。おせんギツネは畜生でも味のついでねえ物は食べねえ。だがらまだ怒ってんだよ」と言うのです。
 今度は、赤飯と煮たあぶらげを大根久保に持っていさました。
 それからは、キツネは現われなくなりましたが、ふたりの子供はとうとう帰ってきませんでした。

      *わかさま「考える人」あるいは「行者」とも、言う。笹や
       竹を使い、人の悩み事を考えてあげる人のことをいう。