だいじゃ
大 蛇 に 逢 っ た は な し

 むかし、生田入りで炭焼きをしていたおじいさんがおりました。
 この人は信心深く、御詠歌を上手にうたったので、「御詠歌さん」というあだ名がつけられました。御詠歌さんは山に丸太やかやで小屋をつくり、その中にひと山焼きが終わるまで寝泊りして炭を焼いていました。
 ある朝、炭焼き小屋の前を流れる谷川を渡ろうと思って近づくと、昨日まで何もなかった川に丸太がかかっています。
 近づくと丸太が突然動きだしたので、「うわっ、大蛇だ」とびっくり仰天、小屋に逃げ帰りました。
 またある日には、前日切り倒した雑木を管切ろうと思って山にでると、目の前の両手でまわすほどの丸太が動きだしました。なんと大蛇だったのです。
 大蛇は鎌首をもちあげて立ちあがり「ベロベロ」と舌なめずりをしています。御詠歌さんは頭の上から見下された格好になりました。
 御詠歌さんはびっくりして腰を抜かしましたが、危害を加えることもなくゆっくり山の中へ消えていったということです。
 小中の宿にも、富士山で大蛇に逢ったという人がいましたが、大蛇はやはり丸太のような大きさで動いた跡は丸太を引いた跡のように草がなぎ倒され、筋がついていたそうです。
 鍋足山でも大蛇を見かけた人がいましたが、東山の大蛇が西山に移ったのではないかと噂されたそうです。

    *御詠歌 巡礼または仏教信者などがうたう和歌、和讃に、ふしをつけたもの。